2014年02月17日
犬と別れた日

CFやプロモーションビデオで
恋人の乗ったバスを追いかけ
力尽きて取り残された女性が
呆然と見送る姿を見るたび
中学の頃別れた犬のことを思い出す
その前の年
永年家族の一員だった犬を亡くして
もう2度とこの悲しみを繰り返したくないと
家族の全員が思っていた
私は一人っ子であったので
犬は弟のような存在で
一番の遊び相手で
いつも一緒だった
だからいなくなったとき
誰よりもショックを受けたのは私だった
ある日

会社の帰りの
父についてきた白い犬
そのまま我が家の物置に住み着いた
かわいそうだからと
何度か餌を与えると
なついてしまった
しかし
飼うのに反対した母には
近寄ると
「ウー」と言って威嚇した
私はこのまま飼いたいといったが
母は成犬の野良犬だから
世話が難しいと反対した
「どこかに捨ててきなさい」
何度も「飼いたい」と言ったが
聞き入れられなかった
私もまた喪失感を味わうのは辛かった
やむなく街中の塾に行く日
その白犬を捨てに行くことになった
何日か餌を与えず腹ペコにしたある日
私はお菓子を持って
自転車に乗り
その犬を外に連れ出した
腹ペコの犬は餌に誘われ
自転車についてきた
家からかなり離れたところまできたとき
私はお菓子を全部その場にぶちまけた
そして犬がお菓子を貪り食う間に
自転車を発進させた
と、 餌を食べていた犬が
あわてて私を追いかけてきた
しかし食べ物より私を選んだ犬を
私は裏切ってしまった
必死で追いかける犬
全速で自転車を漕ぐ私
・・・・・
とうとうその差は広がり
犬が見えなくなった
・・・・・
何日間か
匂いを嗅ぎつけて
犬が戻ってこないかと
無為な日々を過ごした
・・・・・
それから何十年もたった今でも
別れの場面を見るたび
あの日の犬との別れを思い出し
私の心は切なくなる
Posted by kenkouarisa at 16:45│Comments(0)
│菅 健一です