2009年07月30日
おいしく食べたい

昨夜は老健施設の往診に行ってきました
もう当院とは20年以上の付き合いになる
70代の女性の患者さんが
最近そこに入所されました
病室に入ると
患者さんは私の顔を見るなり
泣き出されました
末期がんで治る見込みがないこと・・・
毎日が不安でたまらないこと・・・
こちらも気休めの言葉では慰めようもありません・・・
そのまま患者さんの言葉を受け止めるしかありませんでした
からだがやせ細ったため
合わなくなった義歯の調整をしながら
いろんなことを語り合いました
からだが動けなくてなにもすることがないこと
一日がとても長く感じること
楽しいことを考えようとすると
悲しいことが思い浮かぶこと
唯一の楽しみは食事であること
キレイでサービスの行き届いた施設で
スタッフのかたも優しいけれど
やっぱり帰りたい・・・帰りたい・・・と
何度も言われました
ビールがお好きなことを知っていたので
「ビール飲みたいでしょう」て言ったら
一昨日、米国から妹が見舞いに来たので
初めて外泊して家に帰ったことを話されました
そのとき飲んだビールはとても美味しかったと
はじめて笑顔がこぼれました
母親が83歳で亡くなったので
その歳までは生きたいと語られました
生への執着
そしてそれを支える食事
生き永らえるために食べる・・・
通常とは次元の異なる食事の意義
治療を終え
病室を出るとき
起きれない患者さんが
力を振り絞って
起き上がり
そのやせ細った手で
しっかり私の手を握り締めて
感謝の気持ちを表してくださいまして
思わず目頭が熱くなりました
Posted by kenkouarisa at 20:29│Comments(0)
│スガ歯科日記